加工の基礎知識として「Tシャツプリントの4つの加工方法について」を紹介しました。
Tシャツに限らずウェアプリントの方法はいくつかありますが、
素材によって制限があったりなど注意しておくべき点があります。
場合によってはプリントできない製法も。
企画の段階でフルカラーのデザインで、インクジェットで想定して準備していたものの、展開したい商品の一部素材がポリエステルだったため一部だけ転写加工になり、質感が変わってしまった。など、コストや管理上も同じ加工方法にしておいた方が楽なケースは多々あります。
代表的な4つの素材毎の得意、不得意の加工方法を紹介します。
◯綿
Tシャツの代表的な天然素材。パーカーなど他のアパレルにも多様に使われる為様々な厚み、形、糸、編み、織りの生地がある。メーカーもこだわりがあり、各社とも綿の定番商品を展開している。一般的なスタンダードな厚みは5〜6オンス。
一番販売数が多いPrintstar00085-CVTももちろん綿100%。縫製前の生地を一度水洗いして製品化することで、使用後に型崩れを防ぐ工夫がされたUnited Athle5942-01や、ざらっとして厚手のアメカジの風合いを狙ったオープンエンド糸のCROSS STITCH oe1116など、綿100%と言っても色々差別化された商品がある。
それだけに加工方法も汎用性が高く、昇華転写以外は基本なんでもOKだ。
細かい話だが、前途のUnited Athle5942-01は水洗いに加えて、糸の紡績時にも櫛通し(コーミング)をしており、記事のネップ(毛玉)が少ない。こう言ったことから生地の表面が滑らかで変形も少ないため、どの加工の際にも綺麗に仕上がる。
逆にコストを抑えた商品(型番は伏せる)は、毛玉が多かったりしてインクの乗りが悪かったり、生地の粗悪な染色・柔軟剤などの影響を受けて、インクジェットの前処理材の定着に影響したりなど、プリントの仕上がりが悪い場合もありトレードオフの関係である。
同じ綿のTシャツで同じシルクスクリーンのプリントしても、表面の仕上がりが若干変わってしまうのはそういった繊維の製造過程の違いということも知っておきたい。
刺繍については◯とはされているが、Tシャツはニット(編み物)なので柔らかく伸縮が高いため、大きな刺繍を施すと生地が突っ張った状態になるため、ワンポイントの小さい刺繍(もしくはワッペン縫い付け)をお勧めする。
◯ポリエステル
アパレル素材の中でも化学繊維(石油製品)の代表で、ドライTシャツなどに多用されている素材。現在でも新たなポリエステル素材の繊維が多数生み出されていて、機能性の他リサイクルポリエステルなども注目されている。
加工方法はインクジェット以外は万能に対応できる。(インクジェットは一部の機種に限られるのでまだ一般的ではない)
ポリエステル100%生地にのみ対応する加工方法が昇華転写だ。サッカーやバスケットなどスポーツのユニフォームには定番となったプリント方法で、元々白の生地に対して熱プレスで色を繊維に浸透(昇華)させる方法で、通気性を損なうことなく印刷することができる。
◯綿ポリ混紡(T/C)
T/Cとはテトロン(Tetoron)とコットン(Cotton)の混紡素材。
テトロンは東レ・帝人の商標のポリエステル繊維の事。
実際にはP/C(ポリエステル(Polyester)とコットン(Cotton))と表記したいところだがT/Cで定着している。
アパレルではポロシャツに多く採用されているがドライTシャツにも採用されている。
綿ポリ混紡素材としては他に、杢グレーやアッシュなどのマダラ(霜降り)生地や裏がフリースで表が綿のパーカーも混紡素材となる。
混率がそれぞれ違うため、厳密には混率次第でプリント方法を変える場合がある。
ポリが60%を超える場合はポリに対応したプリント方法を意識し、綿Tシャツの杢グレーなどは80%以上が綿であれば、綿に対応したプリント方法とする場合もある。
インクジェット印刷に限っては綿100%と比較して、若干色が綺麗に出なかったり、洗濯堅牢度が少し低かったりする場合があるため注意しておきたい。
昇華転写もポリエステル比率が高ければ可能だが、綿の部分には色が移らないので印刷が薄くなり推奨されない。
シルクスクリーン・転写・刺繍は他の生地同様に生地の影響なく加工が可能。
◯ナイロン
イベントブルゾンやエコバッグに多用されている。ポリエステル同様の化学繊維だが、固くテカリがある。他の素材に比べ滑りやすく浮きやすいため、加工が難しい。
さらには撥水加工されいるブルゾンが多く、専用のインクや転写シートでなければ出来ない。家庭で加工することはほぼ出来ないと思っていただいて、専門業者に依頼していただきたい。
まとめ
どんな素材にもメリットデメリットがあり、加工も制限されます。
やはり綿でシルクスクリーンという定番の組み合わせのプリント方法は、こうしてみると生地を他の素材に変えたり、逆に綿の製品のまま加工を変えたりしやすいので、これから加工を始めようとする場合の入門としては切り替えやすいのでおすすめという事ですね。
また、お客様自身の知識で判断していただくことも重要ですが、業者のスタッフが「できない」「得意ではない」「◯◯のリスクがある」などネガティブな情報も正直に教えてくれるかどうかも業者選びには大事ですね。
プリント基礎コンテンツ
(1)Tシャツプリントの4つの加工方法について
(2)生地の素材別の対応プリント方法
(3)Tシャツプリント失敗・トラブルの落とし穴3選
(4)中学生・高校生クラスTシャツ最前線
(5)SDGsとTシャツプリント